人為と天為の境界に、降りてくる気配を待つ

ひとときのざわめき、
でも、しずまりかえってからのほうがはるかにながい、
ということを

20191025

2019.10.25

激しい雨に艶、色・濃くする林と人里の境界、"母の塔"のふもとに眠るふたつの「閾」、秋から冬へと深まる日々の天気読み。
「ささやき壁(whispering dish)」の正面に立ち、土の近くの茂みの中の、騒々しい微音に耳をそばだて、想像しましょう。人間の聴覚では認知できないような、人間の視覚が捉えられないような微細な自然の営みを。

20191026

2019.10.26

曇り

コーティングした角砂糖がピアノ線の先に乗っかり、弾き飛ばされたり、落ちたり、そうして、地面や草むらの中にいる生き物たちのごはんになります。

20191027_2

2019.10.27

晴れ

朝7時。夜半から早朝に降った雨の気配残る「閾」。こぼれ落ちた砂糖たちは丸みをおび、小さな蟻たちが一心不乱にたかっています。その脇を、髪の毛の直径ほどのもっと小さくて色の薄いものたちがあわただしく移動して、誰も人間の視線を気にしてる場合じゃない様子。フォームから転がりおちた砂糖は土の上に黒い沁みをつくり、土が濃くなってる。

20191027_2

2019.10.28

晴れ

ピアノ線の先に乗っかる砂糖が増えました。フォームに落ちた砂糖たちは、地面の近くにいる生き物たちにはまだ充分に何日も食べられるくらいたくさん、人間の目に見える姿で転がっています。

2019.10.29

今日は早朝から夜半まで雨が降っていて。

2019.10.30_1

晴れ

ワイルドなやつキター( ̄▽ ̄)
昨日の雨の前は小さな虫たちのごはんになってた砂糖がきれいさっぱり見えなくなりました。けものの鋭い爪でフォームが激しく掘り返され、「whispering dish」システムのケーブルも噛み切られ、『熱狂のライヴ』の余韻。渋谷センター街のハロウィン・チルアウトの夜明け、みたいな。
「閾」は、もともと、鑑賞者に見られることを待っている“作品”であることからの離脱を目指した探検だから、これはとてもわくわくするサクリファイス。

20191030_1

太郎美術館のある枡形山はナッツがたくさん実る。普段、それらを食べてるフレンズたちは砂糖を何だと思うんだろう。ドーパミン→ノルアドレナリン→セロトニン・ドライブ。けものの味覚に“甘み”はある?糖尿病になっちゃったらどうしよう。蟻や虫たちは糖尿病にならないのか…などもやもや。ピアノ線に砂糖を乗せながら、木立の奥からフィードを待ってる視線を想像する。日が暮れたら、彼らの時間。

20191030_2

2019.10.31

晴れ

もはや餌場。そして頭数が増えてる…もしくは凶暴化している…。面白くなって来ました。

「閾」は、人間が、見えないから居ない/無いことにしている微生物や地面の中など表面に隠されたものをあらわにする、隠れているものに現れさせる仕掛けだから、これまでの「閾」を仕掛けた場、石川県の鶴来町の神社や空き地、東京の神宮外苑通りにある建築会館の庭、太郎美術館の池…でも空中や地中や草叢から這い出てくる生き物たちの生態系に介入してきた。けどこれまでは現れなかった哺乳類、ついにきました。これが枡形山の自然。

20191031

2019.11.01

晴れ

どうやらフレンズは狸だね。一応さ、美術作品「閾」の角砂糖ってそれなりに手間暇かけて時間もかけてコーティングするのよ。それなりに、お、いい塗りになった、とか沁み具合とかに一喜一憂しながら一粒一粒、パティシェの気持ちで作るわけよ。それをフレンズたちが一瞬にして貪り食っちゃうんなら、ただの餌やりやん。毎日フィードするんじゃ健康にもよくないし。

ということで、今日は枡形山を登る道すがら落ちてるナッツを拾い、フレンズがズタズタに掘り返したフォームのくぼみにサーヴしてみた。今晩は甘くない。フレンズ、どうする?

20191101

2019.11.02

晴れ

だぁぁードングリかよふざけんなっつってけもの大荒れの模様。

20191102_3

2019.11.03

曇り

今までどんぐり食べてたくせにこの態度(でもちょっと食っちゃいましたみたいな)。
文化の日の今日、母の塔のまわりはマーケットや野点でとてもにぎやか。天気は曇りで空気の湿度が増している。明るいうちに雨になったら今夜はけものに根こそぎ持ち去られる前に蟻や蝿やバッタやそのほかの小さな生き物たちにもおすそわけのごはんになる。

砂糖菓子作りをしていると、風船をもった子供達が、何やってるの?と集まってくるので、夜になるとあの山の中から狸が出て来て食べちゃうんだよ、って話したら、狸がいるの⁉︎とびっくりしていた。姿を見せないけどいるんだよ。この話を聞いてる。

20191103_5

2019.11.04

晴れ

けものたちは白いキューブのたからものをいっぱい抱えて巣穴に溜め込み、今日を生きる仕事を終えて夜明けの眠りにつく前に思うんだ。
今日もたからものは実るだろうか。この前はどんぐりだった。どうして、いつ、たからものは実るんだろう。空に梢はみえないのにどこの木から落ちてくるんだろう。ここいらのやつは誰も、枡形山で初めてのことだという。いくつかの秋を超えて一度だけ実るまぼろしの実。そんならこの秋はなにかとくべつなんか、とくべつな秋にめぐりあわせたおいらがさいわいなのか。

2019.11.05

晴れ

今日はどんぐり拾いの話をしましょう。ほんの2日前までは掃いて捨てるほどいっぱいそこらじゅうに散らばってたどんぐりがさっぱり見えなくなっていた。よくよく木の根元を見ると、土に潜り込もうとしているどんぐりたち、here tehere everywhere.丘の形はさほど変わらないと思っていたけど、雨が降ってぬかるむと沈み、土が流れて覆い被さり、徐々に、そのまあるいからだを土の中へ潜らせていく。

三本の、種類のちがうどんぐりの木のもとで、土にもぐりこんでもはや安堵しようとしてるどんぐりの、わずかに地表にのぞく艶を見つけては掘り出す。待って、まだもぐっちゃだめだ、って。それはもう目を閉じて向うへ行こうとする人を眠らせまいとしてこちらに繋ぎとめようとするのに似ている。つまり、重力に委ねるのが自然なのに不自然なことをしているんだ。

20191105_donguri

2019.11.06

晴れ

日が暮れるとけものたちはまたあの山境に実るたからものを見つけにいく。
今日も実は落ちてるのが見えなくて、邪魔なものひっぺがして土にうまったやつを探すんだがどうしたって見つからなくって、匂いのしみこんだ地面を掻いた爪を舐めてみる。
11月3日の角砂糖は予想通りその夜のうちにけものにすっかり持ち去られ、三晩が過ぎました。雨が降ってあたりが湿るとそこはかとなくけもののにおいがただようというひともいます。

20191106

2019.11.07

晴れ

毎晩やってきてはどこに隠しトンジャーってフォームひっくり返すわ土掘ってみるわ、フォーム噛んだり、やりたい放題。
罪のないWhispering Dishのケーブルはこの10日間で2回噛み切られ、今朝は集音器が無くなっていた。林に向かってところどころにフローラルフォームの破片が散らばり、どうやって運んでるんだか、ブロックごと、ピアノ線3-4本刺さったままごと、そこらへんに転がっていて、けものが2つの通り道で移動してるのがわかる。

そうして適当に放置されたフォームを拾って元の場所にはめる作業をしているときにふと見ると、とある地面にスリット状の穴が三つ並んでるじゃありませんか……ほほぅ…。ちょっとのぞいたくらいじゃ尻尾をあらわすはずもないのだが。「閾」にはらりと松の実が降って来た。
暦の上では立冬、冬の始まりを告げる風。

20191107_ana

20191107_akebi

2019.11.08

晴れ

10月25日からはじまった「閾」は2週間を過ごしました。山の季節は日ごとにその日にあるべきことを済ませて着々と冬に向かっています。昨日は少し冷たい風が梢をもてあそび、冬の訪れを予感させる気候でした。
「閾」はひとまず山の民(枡形山の生き物たち)と里の民(わたしたち)の互いの辺境にあって接合点としての「市(イチ)」の原型となりつつあります。ならば山の民には芸能でも振舞っていただきたいものですな。

20191107

2019.11.09

晴れ

とりあえず来てはみるものの、もうあの魔法のような宝の実をみつけることはなかった。

20191108

2019.11.10

晴れ

毎朝お天道様ははしごをかけて降りてくる。今日こそは宝の実をつけてくれるんじゃあるまいか。
そうでなくちゃあもうつまらなくてあそこへ行く気にならないよ。

2019.11.11

雨あがり

昨日の晩から風が梢を揺らし、夜半には雨が、夜中じゅう、飽きもせず、降っていたんだ。
お天道様が光をくれても、今朝は殊更に空気が冷たく、空は鉛色にもじもじしている。
もう何日も、宝の実がなってた場所は死んでしまったみたいに、風が葉っぱを転がす以外におもしろいことはない。たまに虫たちが通りかかるけどもうみんな知らないふりをして忘れようとしているみたいだ。冬が始まった。

2019.11.12

雨まじり

雨が降ると冷たいんだが、お天道様が照るとたちまちに陽の当たるところだけ暖かくなる。日に日に弱々しくなる光。お天道様がいる間は穴の奥でうとうとして夜を待つ。

2019.11.13

晴れ、ときどき曇り

こちらもちょっと考えて、特別な角砂糖じゃなくどんぐりを立てることにした。今夜も奴らは来る。

20191113

20191114

2019.11.14

晴れ

もう宝が実らなくなって2週間経つ。朝晩はすっかり空気が硬くなってそこいらに落ちてたあけびは食べ尽くして皮は土になり。こないだ雨が降ってからはもう宝の実の地面に匂いも味もしなくなり。

2019.11.15

晴れ

夜に月影が揺れたんで見に行ってみたんだ。わぉ実がなってる!

…コレジャナーイ‼︎

20191115

2019.11.16

晴れ

なんだよあいつ…。

20191116

2019.11.17

晴れ

もう土にもぐって眠ろうとしていたのに掘り起こされたどんぐりたちは半睡半醒のままピアノ線の梢の上で風にまかせてゆらりゆらり、お天道様にあたためられた昼間には土に眠る夢をみる。

2019.11.18

晴れ、のち夜半に雨

お天道様が来ていても冷たい風がびゅう、と梢を揺らす。また嵐が来るのかしら。

2019.11.19

曇り、のち晴れ

夜中じゅうしとしとしとしと雨が降っていた。朝お天道様が空を明るくするころには靄がたちこめ、木々、草々をなでて漂っていた。
あのどんぐりをどうしたものかと思案中。

2019.11.20

晴れ

里に暮らす民から見れば異界である山との境界、此方と彼方の境界坂。梢の鳥や、たぬき穴からながめれば、こちらが彼方、なんとも奇異な、この世ならざる硬い大木や巣が唐突にたちあらわれる異人の域。
此方と彼方、交わらない視線がともに幻視するのがこのサカイ、サカイにある依り代としての『閾』の室礼。

2019.11.21

晴れ

どんぐりは相変わらずのんきに風に揺れて、しずまりかえっているようだけど、時折、羽根つき松の種や、杉の枝先や、葛の枯葉が舞い降りてきて、フローラルフォームが苔むし、ほころびていく。植物たちで賑やかなんである。お天道様が沈むとほんとうにひんやりと空気が冷たくて、今夜は少し重たく沈む気配。
もう立冬も末の候だもの。

20191122

2019.11.22

暦の上では小雪というて、ただでさえ冷んやりする朝、朝から一日じゅう雨が、しとしと、しとしと、降っていた。夜半には氷みたいに冷たい雫が草木をたたく。どうしようもなくお腹がすいたら、ちぇっ、と思いながらもひとつ、ふたつ、かじっていってるみたい。
ナメクジのような模様の疱がひとつぶ、虫の卵かしら。

2019.11.23

今日も夜半からしとしと、雨。お天道様は姿をみせず、曖昧に明るい昼間。時折雨がやみ、梢にこもっておしゃべりしていた鳥たちがほかの林へ飛んでいく。それもつかの間、細かく細い雨が続く。
もともとは枡形山、そこへ人間が来て林を切り開いて人間の居場所を作ったかと思ったら、枡形山のどの木よりも背が高くて太っちょで変てこな、葉っぱのない枝がはえた、それはそれは大きな木がいきなり生えたんだよね。

20191123

2019.11.24

曇り

2日間の雨があがり、明け方には雲の合間に青空がのぞいたけれど、まもなくまた雲におおわれた、曖昧な明るさの朝を迎えた。つまらないどんぐりも毎晩ひと粒ふた粒かじっていたから、降ってくるいろんなものとまじって殻がそこいらじゅうにころころ散らばってる。
この場所に『閾』をしつらえて37日目。右の依り代にどんぐり、今日から左の依り代に宝の実をつける。

20191124_1

20191124_4

20191124_5

2019.11.25

晴れ

お約束通り、角砂糖はひとつも、ひとっつも、残らず持ち去られ。
そういえば、2週間ほど前には時折地面から、むっとするような生暖かいような、けものの臭いがしたものだけど、なんだか雨まじり続きのうちにはっきりと季節が変わり、そんな臭いもしなくなった。

2019.11.26

雨まじり

(もうないんかーい!バリバリバリバリ)

2019.11.27

(んだよどんぐりしかねーんかよカリカリカリカリ)

2019.11.28

(もう雨ばっかだし氷みたいに冷たいしユミトはこねーし穴ん中でまるまってたほうがいいし。)

20191129

2019.11.29

晴れ

けものたちの襲撃が去って5日め。踏みつけられて沈んだ足跡にも、ひっかきまくった爪痕にも、木の葉や草や、種や枝やらが降って来て、雨に打たれ、風に遊ばれ、そこかしこに居場所をみつけてそっと横たわる。その合間を小さな虫たちが、さささささ、と時折通り過ぎる。
小さなものたち、軽いものたちの世界はせわしなくも時折、時折、時折、のできごとで1日が過ぎる。

2019.11.30

晴れ

もう11月もおわり。枡形山はゆっくりと秋を深めていく。暦のうえでは「楓蔦黄(もみじつたきばむ)」といえばひとつきまえの気候というけれど、いまようやく、紅葉が華やかなりし。
  太郎美術館のふもとのメタセコイアの梢も緑から黄色へ、紅葉は青葉から黄色へ、赤みへ、青かった杉の実も茶色へ。
  麓の民家園の軒先では干し柿がきらきらと光っています。

2019.12.01

曇り

お砂糖を植えていると、林の端から、がざがざがざ、と時折音がする。ユミトの神様がお宝をもってきた、のを、茂みの中から、矢も盾もたまらぬ興奮を抑えて見てるのか。
逆か。山の民に供え物をしているのかな。カラスじゃない鳥が、こっちの梢とあっちの林との間で大声でおしゃべりをしてる。ユミトが来たぞ、白いの置いてるぞ、宝の実が湧いたぞ。

20191201_11

2019.12.02

夜が明けると、もう角砂糖は跡形もなく、なぎ倒されたピアノ線と、掘り返した爪の跡。
たぬき会議:どんぐりを何個かかじると宝の実が実ったんじゃ。
どんぐり放っておいてる間、実らなかった。
こないだ2,3個かじった次の日、実ったんじゃ。
どんぐりもちょっくら増えとったど。

20191203

2019.12.03

晴れ

たぬき会議:どんぐりもあれやな、かじってほっとくとかとうなってまじいわな。
あんな、上からかじったらあかんの、横から噛んでひっぱると取れんで。
にゃ、あの立っとるの、こうして倒したら手ェで取れんで。したら全部食える。
わしらもともと食うとってん、ならこれかてたいそうな冬ご飯や。

20191204

2019.12.05

晴れ

暦の上では小雪も末、「橘始黄(たちばなはじめてきばむ)」候というけれど、ここ2,3日はお天道様もよく照って気温もそこそこあって寒さは小康状態。

2019.12.06

晴れ

土に潜り損なって転がったどんぐりたちはあわれ、グレーチングにぴったりハマって石ころのお仲間たちと一緒に進退窮まる。

2019.12.07

晴れ

小池の鴨は鴨なりに忙しく。
そういえばこの前みつけたけものの穴らしき穴はどっさり、断ち落とした枝の山にうずもれていたの。奴が飛び出して来やしないかとおっかなびっくり、枝の山を持ち上げてみたけど、その下にも枝がみっしり、で穴は見つけられなかった。ひっくりしてもう引っ越ししたかな。

2019.12.08_1

晴れ

閾を遠くから眺めると、毎日あまり変化がないような気がするけど、地面に近い目線でよく見ると、絶え間なくいろんな変化が起き、積もり、崩壊し、入れ替わっている。その一方で、なぜかピアノ線にからみついた枯葉は風の力でも外れることができず、もう何週間もそこでくるくる回っているんだ。

20191208_2

2019.12.08_2

晴れ

さて、夜になった。といっても時刻はまだ17:20すぎ。さっきまでCafe TAROでメタセコイアの梢にかかる月を池の「樹霊」越しに眺めていたのに、美術館が閉館して外に出たらもう夜のとばりが降りていて、人影もない。
今夜は月齢11.5、若潮。満月に向かう上限の月が煌々とあたりを照らす。

20191208_12

20191208_11

2019.12.09

晴れ、のち雨

今朝は晴れ晴れとして、夕方から雨雲になり、夜、雨が降った。
10月19日にここの鬱蒼とした草を刈り、閾を設置した時は、ブヨに噛まれヤブ蚊に刺され、蜂はくるわ土の中からミミズがにょっきり、バッタが飛び回り、小さな生き物たちがのびのびとここで繁殖していた。冬に向かう季節ともあいまって、ここがけものたちの餌場と化してからは、めっきり姿を見せなくなったね。

2019.12.10

晴れ

昨夜半にポツポツと雨が降って、偶然に角砂糖にあたった水滴がコートの中に入り、溶けて甘い水になってピアノ線を伝ってフォームに染み込み、ピアノ線の先にコーティングした砂糖の殻が残ったまま、冷えて、晴れて、そのまま。この姿は1995年に、まだタイトルのない、のちに《閾》と名付けることになる、コーティングした角砂糖の実験の時に見ていた姿だ。敏子さんが目撃した《閾》は東京の冬の乾いた風にぶつかり合い、カタカタと音をたてていた。《閾》はいつも、違う。

2019.12.11_1

晴れ

先生!こいつです!

20191211am0207

2019.12.11_2

晴れ

12月11日の丑三つ時、雨がときどき、ぽつ、ぽつ、と線をえがく、午前2:07、前の日の夜半にフォームに染み込んだ砂糖水に誘われて、やってきました。とうとう会えたね。まだピアノ線の先に殻が残ってるのもあるけど、ほとんどの殻はフォームに落ちて。カリコリカリコリ噛み砕く音がする。
朝方4時頃にはお連れもやってきて、甘い雫のこびりついてピアノ線をぺろぺろと味わう。
12月10日の丑三つ時にも、その前にも来て、ちょっとづつ食べてたのかな。

2019.12.12

晴れ

もう昨晩で角砂糖の姿は見えなくなり、植物が遊んでる昼間を過ぎ、また朝の4時頃に様子を見に来たんだね。もうカリコリ食べる角砂糖はないけれど、フォームに沁みた甘い香りをどうにか欲しくてカリカリ爪で引っ掻いてっみる。
夜明け前に巣穴へ戻ってお休み。
残り物はないかな、と散歩に来た鳥。

20191212am0419

20191212am0642

2019.12.13

晴れ

それでも来ちゃうんだよなぁ…

20191213am0541

2019.12.14

晴れ

みなさん、《母の塔》に来たら看板のQRコードでここ、「冬の深まりへの天気読み」日記をのぞいてね。あなたが見ていない時の出来事はあなたが見たときの出来事とつながってる。

2019.12.15

湿り気

そんな翌日、湿り気のある地面に吹寄。

20191213am0541

20191213am0541

2019.12.25

曇り

夜、といっても夕飯前、の様子。

20191225_k01

2019.12.26

曇り

クリスマスの夜を境に、けもたちは来なくなった。角砂糖をしつらえては翌朝にはぺろりと無くなるコミュニケーションに慣れていたので、もうこないのかと思うとさみしくもある。
冬眠はしないと聞いたが、いよいよ冬ごもりか、もうすぐ年替りだし。

20191226_1758

20191227_0655

2019.12.27

風の強い日、午後ひとときの雨

おとといしつらえた角砂糖はまだピアノ線の先で揺れている。いくつかは地面に落ちたり崩れたり。
風の強い日、林の梢がゆっさゆっさと揺れ、鳥たちはどこかへ身を隠し、地面の枯葉は行くあてなく漣(さざなみ)のごとく。

20191227_k01

2019.12.28

晴れ

ひとときのざわめき、
でもしずまりかえってからのほうがはるかにながい、
ということを
あのこたちはどうしてもう来なくなったんだろうか

20191228_1854_s01

2019.12.31

晴れ

大晦日の朝、夜半の氷雨をためたしずく。
小鳥たちの日常、散歩。

20191212am0419

2020.01.12

ぽつぽつと雨

展覧会の間、ここにいるのは明日でおしまい。
最後のお砂糖を植える。
今日は寒くてぽつぽつと雨が降って、林の奥から奇妙な音が聞こえる。姿が見えないもの同士の空想は物語をうむけれど、実際のところは林の向こう側で誰かが何かの作業をしているだけかもしれない。妖怪・あずき洗いのようにね。
気づけは冬至から3週間たち、17時を過ぎても外はまだ明るさが残っている。フラッシュなしでもどうにかお砂糖が映るくらいだ。
おやすみ。

20200112_01

20200112_03