***19.jun.2005
新宿のBEAMS galleryに喜多尾浩代さんの身体表現を見に行く。ヒグマ春夫さんの、水をモチーフにしたインスタレーションに介入する即興身体である。
6階ギャラリーのガラス面は吹き抜けから5階を見下ろせるようになっていて、ここで起きている出来事と全く関係なく、ネクタイを選んでいる人、待ち受けている店員さんの風景を不思議な気持ちで眺めていた。男の人もネクタイは自分で選んで買うんだなあ、と。女の人も自分でアクセサリー買うこともあるもんね、というか、そっちのほうが多いか。昔、高校出て就職した女友達が、自分で指輪を買った、と嬉しそうだった時、へええ、自分で買う物なのか、とちょっと新鮮な気がした(といっても、自分の経験知ではなく、一般知識として、人に買ってもらうものだと思い込んでいたのだ)。そんな懐かしいような気持ちで眺めているうち、喜多尾さんの身体は、壁の内側の闇空間からにじり出し、少しずつ、筋肉に神経の命令が伝わるのを確かめるように力強くゆっくりと小刻みに、フロアを這い、ガラス壁をたどって立ち上がる。ネクタイ売り場のスマートな店員さんが、笑みなのか困惑なのか決めかねているような表情でこちらを見上げて、一瞬、「芸術を前にしたらこうあらねば」みたいに神妙な顔つきに代わり、けど、誰かに助けをもとめるように頬をひきつらせて5階フロアを見渡していた。ファッションショーとは違う。そらびっくらするわな。6階はといえば、服を見に来たお客さんも尋常じゃない雰囲気を固唾をのんで見つめ、店員さんは売りトークするどころじゃない雰囲気に戸惑いの表情だし。水を含ませたコットンからのびるカイワレ、のはいった透明塩ビコップを加え、相変わらず、余計な脂肪がなく新陳代謝のよさそうな、しなやかな筋肉をたぐりよせ、確かめながら動いてゆく。ギャラリーの入口のほうまで動いて、終わった。随分たくさんの人が、店舗の什器まで囲むようにして集まっていて、しばらく見守っていた店員さんも、みんなが立ち去ろうとしないのにしびれをきらして、そのままそこにたたずんでいる人たちを払い、買い物客が商品を見る邪魔にならないよう交通整理を始めた。若い子たちだから、ギャラリーと店舗のマナーの境界が理解できなかったみたいで、その後もだらだらと什器のまわりにたむろしていた。
次にオペラシティ・アート・ギャラリーへ「谷口吉生のミュージアム展」を見に行った。感想は後日。 夜、石井眞樹作曲「日本太鼓とオーケストラのための」の1977年の演奏映像を見た。諏訪大太鼓だった。昨年秋、青山でみた諏訪大太鼓の中心で全体の舵取りをしていたおじさんの若くてバリバリに叩けた頃の姿があった。
夜半過ぎ、震度3の揺れを感じる。

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